人とは異なりペットの葬儀には現在のところ法規制がなく、そのため誰でも気軽にビジネスを始めることができます。しかし、こうした経緯から高額請求などのトラブルも多く、政令での規制は一定程度は存在しています。ここでは訴訟や契約書など、ペットに関する法律トラブルを解説します。
とある山林で、犬や猫などペットのもと観られる多数の死体が発見されました。のちにこれらは、火葬施設を持たないペット葬儀業者が、処分に困り捨てたものだと判明しました。
その容疑者は電話帳に「火葬5000円から」という文言や「納骨無料」といった安さをアピールする広告を載せていました。
しかし、被害者が葬儀を依頼したところ、実際に提示してきた費用は6万円だったと言います。また、被害者が難色を示すと、容疑者は次々に条件を変えて料金を下げてきたそうです。
葬儀の2日後、愛猫のお骨と骨壺が届いたため、被害者はこれを大切なペットのものと思い、以来大切に保管してきたのです。
しかし、ペットの遺体を捨てていた容疑者容疑者が逮捕されたため、今となってはそのお骨も本当に愛猫のものなのかわからなくなってしまいました。被害者は「本当にうちの子のものだと確かめられる骨を返して欲しい」と訴えています。
このようなペットの葬儀に関わるトラブルは、事件として処分されるものだけでなく、裁判に発展する場合もあります。
ペットの遺体遺棄など、悪意のある事件は残念ながらあとを絶ちません。トラブルを回避するためにも、ペットの葬儀を行う際には契約内容をしっかりと定めておく必要があります。
動物愛護管理法では、ペットの販売や保管、貸出、訓練、展示などに関する業態への規制を明文化しているものの、ペットの葬儀や埋葬、霊園に関する業態への規制は設けていません。
なお、「墓地、埋葬等に関する法律」は存在しますが、同法の対象は人間のみで、ペットは対象外となります。
廃棄物処理法により、ペットの死体は「廃棄物」として取り扱われます。一般ごみ、粗大ごみ、汚泥、廃油などと同様の扱いです。
ただし、旧厚生省通知(昭和52年)では、動物霊園事業において取り扱われる動物の死体は、廃棄物処理法における「廃棄物」に該当しないとされています。
ペットの火葬や葬儀、ペット霊園の運営において、ペットの死体から発生した悪臭によるトラブルを防止するため、ペットの葬儀・埋葬等に関わる業者には悪臭防止法に基づいた行動が義務付けられています。
動物を火葬する施設が一定規模以上の場合、大気汚染防止法の「ばい煙発生施設」とされます。事業者においては、同法の規定に基づいた都道府県知事等への届出、ばい煙排出基準の遵守などが求められています。
動物を火葬する施設が一定規模以上の場合、ダイオキシン類対策特別措置法の「特定施設」とされます。事業者においては、同法に基づき排出ガス(大気)の排出基準を遵守するよう義務付けられています。
ペットの葬儀を行ったりペットの霊園を運営したりする主体が宗教法人の場合、葬儀や霊園の運営から入る当該宗教法人の収益は課税対象となる可能性があります。なお、宗教法人のペット供養に関する事業について、最高裁判所が「納税義務のある収益事業」と認めた判例もあります(平成20年9月12日)。
以上でご紹介した法令以外にも、自治体ごとにペットの葬儀・霊園などに関する条例が設けられていることもあります。例えば埼玉県入間市では、「公衆衛生上住民に与える不安を除去するとともに、住民の生活環境の保全に資することを目的」として、ペット霊園の設置に関する「入間市ペット霊園の設置等に関する条例」を定めています。
ここでは、ペット葬儀・霊園における契約書を取り交わす際、クレーマーへの法的対応としても知っておきたい契約内容の注意点を紹介します。
ペットの火葬にもいくつかの種類があります。契約を交わす際には、この火葬方法も事前にはっきりと伝え、契約書にもきちんと記載することで、「話が違う」などと、余計なトラブルを防ぐことにもつながります。と同時に費用についても明記と説明を行い、依頼者が納得した上で契約を交わすようにしましょう。
【ペット火葬の種類】
①合同葬
葬儀のあとにペットの火葬を合同で行います。火葬が合同であるため遺骨が届けられることはありません。
②個別葬
葬式のあとペットの火葬を個別で行います。当日ではなく数日後に遺骨を届けてもらうことができます。
③立ち会い葬
個別層と同様の葬儀となりますが、火葬後にお骨上げをし、骨壺へと収めることができます。骨壺は持ち帰り可能です。
④自宅葬
ペット葬儀社が依頼者の自宅まで出張し、ペット火葬車によって家で火葬を行うことができます。
ペット葬儀社も会社ですから、時には倒産し、運営しているペット霊園なども閉鎖されてしまうことがあります。
その閉鎖についても、ペットの遺族がきちんと納得したものでなければ、のちにトラブルへとつながってしまいます。
実際、過去には一部の業者が突然ペット霊園を閉鎖し、遺骨を野ざらしにしたためニュースになったこともありました。
こうした経緯もあり、ペット霊園の設置や変更に届け出が必要な自治体が数多くあります。
ペット霊園が閉鎖した際、その遺骨は遺族に返すこととなりますが、返却先のない場合には合同の供養塔が建てられることもあります。
ペット葬儀の依頼者は、愛犬や愛猫を失って深く悲しんでいます。そのため葬儀のときはよく確かめなかったけれど、あとで冷静になってみると疑問点が浮かんでくることもあるようです。そうした事態を招かないためにも、契約をする際の内容はしっかりと説明し、必ず納得してもらった上で葬儀を行いましょう。
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