「治療中の医療ミスで訴えられてしまった」とお悩みの動物病院の方へ。ここでは、医療過誤によってどんな責任が追及されてしまうのか、医療事故トラブルを予防するにはどうすればいいのかにフォーカス。
当メディアのアドバイザーも務めてくださっている、ペット弁護士®先生、中間さんが解決した実際の相談事例を基に、専門家はどのように解決したのか、また、トラブルや訴訟になる前にできたことなどをインタビューでうかがってきました。
なかま法律事務所は、動物病院・ペットビジネス事業者のペット法務に注力している数少ない弁護士事務所です。
代表弁護士である中間隼人さんは、(一社)ペットライフデザイン協会の代表理事(2023年4月から)や(一社)犬猫生活福祉財団設立及び評議員などをつとめる専門家。ペット業界の法務に関するアドバイザーを数多く務める他、法人・開業医向けのトラブル防止セミナーも定期的に開催しています。
「ペット弁護士®」は中間先生の商標登録です(登録6505081)
原因は不明ですが、ペットが去勢手術中に死亡してしまいました。治療中の医療ミスを理由に損害賠償請求をされてしまったのですが、どう対応すれば良いでしょうか
そう思いますよね。実際のところ、動物の死因というのは厳密には特定できないことが多いんです。本件も、手術中に亡くなったことは事実ですが、それが担当獣医師の治療に起因するものかどうかは特定できませんでした。
はい。飼い主様には、調査結果の詳細をお伝えし、まずはお詫びを申し上げました。その上で、お見舞い金の提案をしたところ、訴訟には移行せず、和解により解決を図ることができました。
死因が特定できなかったので、和解ではなく争うという選択肢もありました。実際、動物の医療過誤訴訟では、賠償額がさほど大きくないので、訴訟を起こされても、経済的な痛手はさほど大きくありません。
ただ、法的紛争を抱えると、先生方も心理的なストレスを抱えたり、動物病院様自体の社会的評価が下がってしまったりするんですよね。ですから、基本的には和解による円満解決を目指した方が良いかと思います。
去勢手術は、比較的安全性の高い手術ではありますが、やはり、リスクはあるということをきちんと説明すべきであったかな、と思います。
また今回は、獣医師やスタッフの手術後の対応が不誠実に見えたことが、紛争を深刻化させたようです。
トラブルが起きたときに、初動対応を間違うと、和解による円満解決は難しくなってしまうため、日頃から研修やマニュアル作成などを通じて、病院全体のクレーム対応力を向上させておくことが大切です。
弊所では、クレーム対策の研修、マニュアルの策定など、クレーム予防のためのサポートも行っています。
動物の死因というのは、明確に特定できないことが多いと、数多くのトラブルを解決してきた専門家もおっしゃっています。
医療過誤訴訟の場合、金銭的な痛手はそこまで大きくはなく、動物病院様側が受ける精神的ストレスや社会的評価の低下などを考えると、飼い主様と和解する方が、確かに賢い選択肢です。
愛するペットの死亡は大きな引き金にはなりますが、飼い主様からしてみると、それまでの不満もたまっている可能性は大いにあります。
動物病院様側が受けるダメージを最小限に考えてくれて、スタッフ教育までしてもらえる心強いパートナーを何かある前に探しておきましょう。
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いかがでしたでしょうか?
これは、動物病院の数ある医療ミスの疑いからおこるトラブル・訴訟の一例にすぎません。
閉院など、被害が大きくなる前に対策できるように、一番のおすすめは顧問弁護士をみつけることではありますが、次に動物病院の皆様ご自身でできること、対処法、どういう場合に弁護士でないと対応できないのかなどをまとめてみましたので、併せて参考にしてみてください。
医療事故が起きてしまった場合、動物病院には法的な責任が追及されることになります。以下で詳しく診ていきましょう。
獣医師は、動物病院で行う獣医療行為に関して「善管注意義務」を負っています。「善管注意義務」とは、他人のペットを預かるにあたって普通以上の注意をしなくてはならない、という義務のことです。
医療過誤が起きた場合は、この注意を行っていたかどうかが問われます。
もし十分な注意がなされていなかった場合には、過誤(過失)があると判断されるため、日頃から充分な注意を払うと共に、いざ紛争になった際に義務を果たしていたことを示せるよう、客観的な管理体制を整備したり、管理状況を記録に残すことが大切です。
相当因果関係とは、原因と結果が、一般的に予想される範囲内においてのみ、法律上の因果関係を認めるとする考え方のことです。損害が生じたからといって全て損害賠償の対象になるのではなく、過失と因果関係に対してだけ、賠償責任が発生します。
例えば、診察や検査のために支払った治療費は、まったく不要なことを行ったのでない限り、ペットの健康を回復するために必要なため、損害とは認められません。また、過失によってペットの健康状態が悪化し、別の動物病院で治療した場合も、過失とは無関係の治療についての費用は、損害賠償の対象になりません。
医療ミスによって第三者に損害を与える行為を民法では「不法行為」といいます。民法709条では、不法行為を行った側に損害賠償義務を規定しており、以下に該当する場合、責任を問われる可能性があります。
被害者(飼い主)は、動物病院に対して治療費や慰謝料、通院交通費などを請求することができます。
動物病院の中には、治療内容について飼い主に口頭で説明を行ったり、インターネットで拾った手術契約書や同意書をそのまま使っているところが少なくありません。
「日々の業務で忙しくてそこまで手が回らない」というのが本音かもしれませんが、口頭での説明だけでなく、契約書や同意書を取得することはビジネスの基本です。
しっかり作り込まれた契約書や手術同意書などを備えておくことで、医療事故トラブルを予防することが可能です。
「作り方が分からない」という場合は、専門家に依頼するのも一つの手段です。弁護士なら、専門知識に基づいて書類を作成してくれるでしょう。
獣医師が診療を行った場合、診療に関する事項を「診療簿(カルテ)」に記載しなくてはなりません。カルテの保存期間は3年間で、牛、水牛、鹿、めん羊、山羊は8年間です。
カルテは診療経過を解明する重要な資料である上、飼い主や医療関係者間で情報を共有するためのデータベースです。
また、治療に関してトラブルが発生した場合は、飼い主からカルテの開示を請求される場合もあるので、日頃から手術内容の説明内容、手術の内容や術前術後の経過など、カルテに詳細に記録しておきましょう。
ペットを巡るトラブルは年々増加しています。トラブルが起きてしまうと、安定した事業経営が行えなくなる可能性もあるため、予防策を講じておくことが大切です。おすすめなのが、ペット業界や医療事故対応に詳しい弁護士にいつでも相談できる体制を作ること。
トラブルが起きてから弁護士を探していては、初動対応が遅れてトラブルが深刻化してしまう可能性があります。「何かあったときにすぐ相談できる顧問弁護士」を見つけて、日頃から予防策や対応策を話し合っておくことで、トラブルにスムーズに対応することができるでしょう。
動物病院のミスにより、ペットが死亡したり重大な後遺症が残ってしまった場合に、飼い主への慰謝料が認められるケースが増えています。従来は3~5万円程度でしたが、最近ではペットを家族のように思う人が増えていることや、ペットの癒し効果、飼い主の精神的安定に資する効果などに配慮して、慰謝料が増額する傾向にあります。相場はケースによって異なりますが、10万円~50万円の慰謝料も珍しくありません。
飼い主が複数いる場合には、人数分の慰謝料が認められることも多いため、たとえば夫婦2人が飼い主の場合、10万円×2で合計20万円を支払わなければならない可能性があります。
医療過誤で訴訟を起こされてしまうと、病院経営に大きな影響を与えます。このため、日頃から医療事故トラブルを予防する取り組みを行うことが大切です。
おすすめなのが、業界に精通したペット弁護士に気軽に相談できる体制を整えること。顧問契約を行っておけば、万が一のトラブルの際もスムーズに相談できるため、安心して病院業務に集中することができるでしょう。
「人も動物も豊かに暮らせる社会を実現する」を理念に、横浜市で事務所を構える弁護士事務所です。ゆっくり丁寧にヒアリングを行い、迅速に対応する「SLOW&QUICK」を実践。ペット法務では、ペット法務やビジネスに精通したスペシャリストが、高品質なサービスを提供しています。
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